魔眼の暗示のかかりが弱いと思っていた紫音センパイだけど……。

 一番、強くかかっちゃってるよ――――っ!


「し、紫音センパイは、莉子センパイとおつきあいしてるじゃないですか?」


 声が震える。


「莉子? アイツはおれのファンだよ。バンドで歌って、ギター弾いてるおれが好きなんだ。追っかけみたいなもんでさ、つきあってるワケじゃない」

「はあ……」


 紫音センパイは暗示にかかってるだけなんだ。

 そう納得させようとしても、胸のときめきは止まらない。


「おまえは、雨にぬれてる男に傘を差しだせる女だ。このおれがほだされるとはな……。おれ、おまえに夢中だよ」


 紫音センパイのくちびるが近づいてきた。

 そのとき――。

 駆けよってくる足音がして……。


「おい! つむぎからはなれろっ!」


 聞き覚えのある声が、礼拝堂の前に響きわたった。