「そんなに笑わなくてもいいじゃないですかー!」

「いや、おまえみたいなやつ、はじめてだわ」


 ようやく笑いのおさまった紫音センパイは、わたしの頭をぽんぽんして、

「まあまあ、そうむくれんな。この五千円はありがたく受けとっておくわ」

 と、やわらかな調子で言った。


「……にしても残念だな。おれはてっきりラブレターかと……」

「そんなワケないですよ! 紫音センパイとは昨日はじめてしゃべったじゃないですか!」

「でもよ、おれのことは前から知ってるみたいだったじゃん?」


 ニヤッとする紫音センパイ。


「そりゃあ、紫音センパイは学園の有名人ですから……。怜音くんも憧れてるみたいだし……って、あのあと、怜音くんとどうなりました!?」


 そうだ。それを知りたかったんだ!

 すると、紫音センパイはバツが悪そうな表情になった。


「いや、どうって……雨のなかをたたずんでるアイツを見つけて、連れて帰ったさ。そのあと、熱を出して寝こんじまったが……。今日は休むってよ」

「ええっ!? 大丈夫なんですか!?」

「ああ、熱は大したことねーよ。ただ、精神的な落ちこみがな……」

「そんなのぜんぶ紫音センパイのせいじゃないですか!」