「ちょっとぉ。紫音てば! その子、弟のカノジョじゃないの?」

「ちがうんだってよ」


 困惑している莉子センパイにきかれても、紫音センパイは軽くあしらった。

 大さわぎになっている校門からはなれるわたしたち。


「どこまで行くんですか?」


 わたしは、冷静なフリをしてたずねたけれど、声はうわずってしまっていて。

 イケメン王子に肩を抱かれて平気でいられるワケはない。

 きっと顔は真っ赤だろうから、ごまかしてもムダかもしれない。


「ああ、この辺でいいだろ」


 紫音センパイが立ちどまったのは、礼拝堂の前だった。

 ようやく肩から手がはなれて、ホッと息をつく。


「さっ、だれも見てないぜ?」

「はあ……」


 わたしはカバンから封筒を取りだして、紫音センパイに手渡した。

 鼻歌まじりに封筒の中身を出すと、

「何だ、これ……?」

 紫音センパイの眉間にしわが寄った。


「五千円です」

「いや、それはわかるけどよ……」


 わたしは、貯めていたお小遣いのなかから、五千円札をもってきた。


「これはおまえに渡したものだぜ? おまえと怜音の分を会計しろって……」

「お返ししようと思いまして……」