「二年の吉丸……つむぎ……だっけ? おまえ、怜音とつきあってんのか?」

「ちがいます!」

「はあ? じゃあ、なんでデートしてたんだよ?」

「飼育委員の仕事を手伝ったら、お礼したいって言われたんです。べつにつきあってるワケじゃ……」

「ふ~ん」


 いつのまにか、紫音センパイの手が、わたしの背中にまわっていた。

 あわてて、はなれるわたし。

 地面に落ちていた怜音くんの傘と、ひらいた状態で転がっている自分の傘を拾いあげる。

 今から追いかけても、わたしの足じゃ、怜音くんに追いつけそうもない。


「まっ、あいつが行きそうなトコは見当(けんとう)がつく。もう暗いから、おまえは帰れよ」

「……わかりました。でも、怜音くんと仲直りしてくださいね」


 そう言って、怜音くんの傘をもう一度、紫音センパイに差しだした。


「いらねえよ」


 紫音センパイは、髪をしばっていたヘアゴムをとった。

 そして、雨にぬれた長い髪をぷるぷるとふって、かきあげる。

 妙に色っぽい仕草を、ぽーっとなって見とれてしまった。