あっ、まただ。

 心がフワフワと落ち着かない、この感じ――。


「くっ……」


 怜音くんが走りだした。


「あっ、待って、怜音くん!」

「ほっとけ! 追いかけなくていい!」


 紫音センパイに止められたけど、そういうワケにもいかないよ!

 構わず、追いかけようとしたら。

 ぬれている地面に足をすべらせ、バランスをくずしてしまった。


「きゃっ!」


 前のめりにこけちゃうっ!

 覚悟したそのとき――。

 ふわり。

 浮遊感とともに、とても強い力が、わたしのからだを支えていると知る。


「あっ……」


 紫音センパイが、その細い腕で、わたしを抱きしめるようにして助けてくれたっ!

 かなりスリムなのに、やっぱり男の子だ。

 こけそうになったわたしを、余裕で抱きとめてくれた。

 甘い香りが鼻をつく。

 シャンプーの香りかな?

 胸がドキドキしているのは、危ない目にあってびっくりしたから?

 それとも……。


「あっぶねえな。このドジ!」


 悪態が上からふってきた。

 ムカッとしたけど、助けてくれたんだし……。


「ありがとうございま……」


 言いながら目線を上げると。