「紫音、何モメてるのよ?」


 莉子センパイが近づいてきた。


「あら? 紫音の弟じゃないの? 癒やし王子じゃん! 一年坊のくせにカフェでデートなんて生意気~」


 怜音くんを見て、ケラケラ笑う莉子センパイ。

 さらに、わたしを見やると、

「……って、この子、二年じゃん」

 ネクタイのカラーで気づいて、すぐ見下すような目つきになった。


「カノジョ……って感じじゃなさそうね」


 暗に、わたしは怜音くんと釣りあってないって言いたいんだろうな。


「おまえ、まだいたのか? 帰れって言ったよな?」

「えっ……? あれマジだったの!?」


 紫音センパイの容赦ない言葉に、莉子センパイの顔からイヤらしい笑みが消えた。


「マジだ。おれをあんまり怒らせるなよ」

「わかったわよ! でも紫音、傘もってないじゃん。わたしの傘で相合傘してきたんだし……」

「傘なんかいらねーよ。早く帰れ」

「なによ! 埋めあわせはしてもらうからね!」


 莉子センパイはふくれっ面で、ドタドタと店を出ていった。

 店に静けさが戻る。

 うなだれている怜音くんを、にらみつけている紫音センパイ。