「――それで家に帰らず、ぼくの部屋に飛びこんできたってワケ?」


 あきれたように言って、制服姿のわたしを見たのは、イトコの三上(みかみ)賢太朗(けんたろう)――賢ちゃんだ。

 二つ上の高校一年生で、市内で一番の進学校――公立秀清(しゅうせい)高校に通っている。


「そうなの! こういうオカルト系で頼りになるのは賢ちゃんだけだもん!」

「そりゃまあ、ぼっちのつむぎが頼りにできるのは、ぼくだけだろうね」


 にやりとして、眼鏡を指でクイッと押しあげる賢ちゃん。


「なによ、賢ちゃんだって、筋金入りのぼっちじゃん!」

「うぐっ。悪かったな!」


 ……とまあ、こんな感じで軽口をたたきあうのは日常茶飯事だ。

 わたしの家から徒歩五分のところに賢ちゃんの家があって。

 小さいころからいっしょに遊んでいたし、ひとりっ子同士でもあったから、イトコというより兄妹みたいにして育った。

 あたしが唯一、強く出られる男の子でもあるんだ。


「……で、賢ちゃんはわたしの話、信じてくれるの?」


 賢ちゃんの部屋は、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさがあって、よく遊びにくる。