「うまいっ! 吉丸センパイに食べさせてもらうと、おいしさ十倍ですっ!」


 無邪気に言う怜音くんの口元に、とけたチョコアイスがついている。


「怜音くん、ついてるよ」


 わたしがクスッと笑うと、怜音くんはぺろっとなめた。


「まだついてる」


 わたしは腕をのばして、紙ナプキンでふいてあげた。


「あ、ありがとうございます……」


 怜音くんは目を丸くして、頬を赤らめている。

 ハッと我に返って、恥ずかしくなってきた。

 今のは、あーんするより大胆かも……?

 怜音くんはホント不思議な子だ。

 年下ということもあるけれど、岸くんや望月くんとちがって、構えずに自然体で接していられるというか……。

 かわいらしくて、母性本能をくすぐられてしまう。


「ごちそうさまでした」


 食べ終わったあとは、会話がさらに弾んだ。

 怜音くんは聞き上手だから、わたしもついついおしゃべりになる。

 好きなファンタジー小説のこととか、好きなアニメとか。

 他愛もない話題が多いけれど、イケメンの男の子と、こうしてカフェで会話できている自分がうれしくて……。

 やさしくて、おだやかな時間――。

 怜音くんは、異名どおり、わたしの心を癒やしてくれている。