「ねえ、マスターも素敵ね。お姫さまに仕えてる執事のイメージじゃない?」


 わたしが声を落として言うと、怜音くんはクスクス笑った。


「たしかに、そのイメージですね。いつ来てもバイトの店員さんいないから、おひとりでやられてるのかなあ?」


 中学生じゃなかったら、わたしがバイトしたいくらいのお店だ。


「注文、ぼくはもう決めてます。吉丸センパイはどうしますか?」

「あっ、ちょっと待ってね」


 あわててメニューに目を落とす。


「ええと……紅茶にしようかな」

「スイーツはどうですか? ぼくのオゴリだから、遠慮なくどうぞ」

「ええっ! そんなの悪いよ!」


 紅茶だけでも十分すぎるのに……。


「ぼく、家がお金持ちだから、ホントに遠慮はいらないですよ」


 あっさりと言う怜音くん。

 育ちのよさがにじみ出ているから、それは本当なんだろうな。

 聖ネクサス学園の生徒は、お金持ちのお坊ちゃん、お嬢さまが割といる。

 あっ、わたしの家はフツーだけど!


「ぼく、スフレパンケーキを食べますから、吉丸センパイもパンケーキどうですか?」

「うん…………えっ!?」