あらためて、店内を見まわす。

 お客さんは少なくて、文庫本を片手にコーヒーを飲んでいる若いサラリーマン、あとは静かな声でおしゃべりしている二人組の女子高生だけ。

 ゆったりとした時間が流れていて――。

 とってもステキな雰囲気!

 こんなお店があるなんて知らなかったなぁ。


「どうです? イイ感じじゃないですか?」

「うん! 素敵すぎるよ! わたし、こういうお店大好き!」

「よかったあ」


 ホッとした表情を見せる怜音くん。


「ここは、兄さんに連れてきてもらったお店なんです。以来、すっかり気に入っちゃって……」


 すると、マスターがお水とメニューを持ってきてくれた。


「いつもありがとうございます。ごひいきにしていただいて……」


 マスターが丁寧に頭を下げたので、怜音くんもあわてて、

「あっ、いえ!」

 と、頭を下げた。

 わたしもつられて頭を下げる。


「お決まりになりましたら、お声がけください」


 マスターは姿勢よくカウンターのほうへ戻っていった。