この前、商店街で上級生にからまれたことを思いだして、胸がちくりと痛む。

 三人のイケメン王子が暗示にかかって、わたしに好意を抱いている以上、やっかみを受けることも増えてくる。

 なるべく目立たないようにしたいけれど……。


「ここです」


 怜音くんが立ちどまったのは、ヨーロッパのアンティーク調の店構えのカフェだった。

 看板には【メゾン・ド・セレニテ】と書いてある。


「さあ、どうぞ」


 怜音くんは、木製のドアをあけて、わたしを先に入れてくれた。


「わあ……」


 オシャレで、落ち着いた空間が、そこに広がっていた。

 シャンデリアのやさしい光が、アンティークの家具や雑貨を包みこんでいる。

 座席はすべて革張りのソファだし、壁一面の本棚には古い洋書がずらり。


「いらっしゃいませ」


 白いブラウスに蝶ネクタイをした、品のいいおじいさんが出迎えてくれた。

 細身で、銀髪をきれいにセットしている。

 このお店のマスターみたい。

 怜音くんが慣れた様子でたずねる。


「窓ぎわの席いいですか?」

「ええ、どうぞ」


 窓ぎわの席に案内され、わたしたちは向かいあわせでソファに腰をおろした。