わたしも、いっしょに帰りたがる子をふりきるのが大変だった。

 特に強い暗示にかかってる佐々木さんと小村さんが、今日は部活に出たから、まだマシだったけど。


「じゃあ、行きましょうか。こっちに雰囲気のいいカフェがあるんです」


 怜音くんにうながされ、傘をさして歩きだす。

 考えてみれば、これがわたしの初デートだ!

 しかも相手は、年下ながら、学園の超モテ男子!

 魅了の魔眼の力を使っているから、その罪悪感もあって、心の底から楽しめそうにはないけれど……。


「あっ、傘忘れてきたらよかったなぁ」


 怜音くんが残念そうに言った。


「えっ、どうして?」

「吉丸センパイと相合傘できるじゃないですか」

「――っ!」


 あどけなさが残る声で、割と大胆なコトを言う怜音くん。

 想像したらドキドキしてきちゃったよ。


「穴場のカフェなんですよ」


 商店街とは反対方向の、オフィス街のほうへ向かう怜音くん。

 雨がふっているからか、駅前はいつもより学生の姿が少ないし、商店街から離れてしまえば、なおさらだ。

 怜音くんといっしょにいるところを、聖ネクサス学園のだれかに見られる心配もなさそう。