「大丈夫ですか?」


 私はあわてて手を貸したけれど、ぽきりと折れてしまいそうなからだに息をのんだ。

 わたしよりずっと背が高く、スタイルはいいけれど、まるで人間味がなくて、美しい人形や彫刻を思わせる。


「大丈夫よ。しばらく休めば魔力は回復するから……。じゃあ、あたしは行くわね」


 歩きだしたマヤを、ぼわん! と白い煙が包む。

 そして、煙が晴れると、ふたたび黒猫の姿に戻っていた。


「マヤさん……」


 わたしがつぶやくと、黒猫はふり返った。


「猫の姿になっていると、魔力切れの苦痛はやわらぐの。まだこの辺りにウィッチハンターがいるから、あたしは隠れているわ。さようなら、つむぎ」


 黒猫はマヤの声で別れを告げ、走り去ってしまった。

 えっと……これは夢…………?

 わたしは、しばらく、ぽーっと立ちつくしていて。

 ようやく我に返ると、黒い石をぎゅっと握っていたことに気づいた。

 夢なんかじゃない。

 わたし、本物の魔女に会っちゃったよ!