「びっくりしたけど平気。もうだいじょうぶだよ」

 と、元気に答えた。

「強いんだな、理子は」

 わたしの頭に手をのせて、やさしくポンポンとしてくれる樹くんは、楓くんの姿になっていても樹くんだ。じわっと泣けてきた。

「つ、強くなんか……! もう会えないかもって思ってたくらいだよ」

 わたしはイヤイヤとでもするように、大きく首を横にふった。

 樹くんは、遠くを見ているような目つきになった。

「僕もだよ。楓が助けてくれなかったら、こうして理子と会えなかったかもしれない……」

「え? 楓くんが、助けてくれた?」

 涙が引っこむ。

 わたしがパッと聞きかえしたら、樹くんは「うん」とうなずいた。

「僕たち、歩道橋の階段からいっしょに落ちたあと、夢を見ていたみたいなんだ。なんか、花畑みたいなところにいて……。そうしたら怒った楓が花を蹴散らしながらやってきて、僕を力いっぱい引っぱった」