わたしは覚悟を決めて、楓くんの部屋をノックした。

 すると。

「理子、来てくれたんだ。ありがとう」

 今までに見たことがないほどやさしい笑顔で、楓くんがわたしを迎えてくれたんだ。

「い、樹くん、なの? 本当に、樹くんなんだね……!」

 わたしは、とっさにベッドに駆けよった。

 近くで見た楓くんの表情は、確かに樹くんのものだった。

 やわらかな瞳で、わたしを見つめている。

「理子? なんで僕とわかって……あー、先に楓と会ったんだ?」

 樹くんは少し気まずそうに笑った。

「このとおり、僕たち、おかしなことになっているんだ。びっくりしただろ?」

 こんなややこしい事態になっているというのに、まだ笑っている。

 わたしに心配をかけないように、気をつかってくれているんだろうな。

 楓くんの中身が樹くんだったから、わたしはホッとしてしまった。