まるで「よしよし」と頭をなでられているみたい。
「ありがとう、もうだいじょうぶだよ……」
照れくさい気持ちで笑うと、楓くんの手が離れる。
それでもまだ、ぬくもりが残っているような気がして。
意識したとたん、いちだんと胸の奥がドキドキしてきた。
今まで何度もかばってもらったことはあるけれど、こんなふうに楓くんにやさしくされたのははじめてだ。
とても不思議な、甘い予感が、わたしの心を包んでいく。
ところが、
「……あのうわさ本当? アニキとつきあうの?」
トートツに質問されて。
「えっ」
わたしは言葉につまってしまった。
「アニキじゃないとダメなのか?」
楓くんは、わたしの顔をまっすぐに見つめていた。
真実を見極めようとしているような、強い、強い目の光。
やっぱり知っていたんだ……。