その声にドキッとして、うつむいていた顔をあげた。

 楓くんが険しい目つきをしていた。

 え、怒ってる……?

 頭の中に空白ができた次の瞬間、

「おい、待て!」

 楓くんは立ちあがってさけんだ。

「おめーら、コソコソ陰口たたいてんじゃねー!! 言いたいことがあるなら、言いに来い! わかったか!?」

 低木の陰から急にあらわれた楓くんを見て、彼女たちは「キャア!」とさけんだ。

「の、野々村くん!」

「聞いてたの!?」

 彼女たちは激しく動揺し、顔が青ざめている。

「待って!!」

 わたしも立ちあがり、楓くんの右腕を力いっぱい両手でつかんだ。

「楓くん、やめて! もういいから!」

 思いっきり引っぱって、楓くんをこちらにふり向かせた。

「理子! おまえ、くやしくねーのか? あんなこと言われて!」

 楓くんは怒りをわたしに向けてきた。