「へいへい、わざとね。なるほど」
「その顔は、ぜったい信じてないでしょ」
楓くんはニヤニヤしていた。
「いや、信じてるって」
楓くんもウソばっかりだ。
「もうっ」
わたしがプンと顔をそらして、わざと大げさにむくれたとき。
目をやった方向から、女の子たちのおしゃべりが聞こえてきたんだ。
ドキッとしたわたしは、楓くんの腕をつかんだ。
「かくれて!」
「わっ、なんだ!?」
目を白黒させている楓くんを、力ずくで低木のうらがわに引っぱりこむ。
「なんなんだよ、理子! とつぜん……」
「いいから! 頭を下げてっ」
楓くんの首根っこをガシッと押さえつけて、ムリヤリ地面にすわらせた。
「幼なじみかなんだか知らないけど、あの子、目ざわりだよね? どっちにもいい顔しちゃってさー」
という声がわたしの耳に届いた。
彼女たちはおそらく、わたしを見物しに教室まで来たひとたちだろう。三人とも見覚えのある顔だった。