「忘れたのか? 樹とおまえ、うわさになってたろ。おれたちもみんなの前では、それらしくふるまわねーとな」

 ガックリ。

 やっぱそっか、そうだよね。

 そんな都合のいいこと、あるわけないか……。

 でも、よかった。

 特別な感情は持ってないってわかったから。

 楓くん本人がそう言うなら、そうなんだろうな。



 ……と、安心したのはまちがいだった。

 電車に乗っているあいだも、樹くんは後藤さんと仲よくおしゃべりしていたんだ。

「楓と後藤さんつきあってんのかな?」

「あのふたり、なんかあやしいよなー」

 楓くんとプロレスごっこをしていた友だちも気にしているらしく、ドア付近に集まってヒソヒソとうわさ話をしていた。

 やっぱり、あやしいんだ……!

 ドキドキしながら、彼らの話に耳をすましていたら。