「えっ、いっしょに練習を?」
「おう、たまにだけどな。彼女、なかなかうまいんだぜ」
楓くんが女の子をほめるなんてびっくり。しかも大好きなサッカーのことで。
ひどいよ、楓くん……!
そんなふうに、わたしをほめてくれたことなんて、今までいちどもなかったのに。
エスカレーターをおりてからも、ジーッと非難がましい視線を、楓くんに送っていると。
楓くんはわたしの視線に気づいて、なぜだかニヤッと笑った。
「もしかして焼いてんの?」
「やっ、焼いてないもん!」
本当は焼いているけど……!
「バーカ、よけいなこと考えてんじゃねーよ。おまえは、おれのことだけ考えろ」
楓くんは、わたしの手をキュッとにぎり直した。
たったそれだけのことだったのに、わたしの心臓はドキッと反応してしまった。
「おっ、おれだけって……!」
ままま、まさか。
楓くんも、わたしのことを……?