つまり、うらやましくなっちゃうほどの美少女だったんだ。

 でも現・樹くんである楓くんは、知らんぷりを決めこんだらしい。

「ほら、行くぞ」とムリヤリわたしの手を引っぱって、改札へと向かったんだ。

 ドキッ。

「楓くん、まだアイサツが済んでないのに……!」

 手をにぎられた瞬間、顔が熱くなっていく。

「んなもん、いらねーよ」

 楓くんは、わたしの手を引っぱったままドンドン進んでいった。

「だって紹介してもらったんだよ。アイサツをきちんとしないと、感じわるくなっちゃうよ。そんなのよくないって」

 小走りでついていくのがやっとのスピードだった。

 楓くんの耳に、わたしの声が届いているかもわからない。

「楓くん、そんなに急がなくても……!」

 そのまま改札を通って、ホームへ行くのぼりのエスカレーターに乗る。

 そこで楓くんは、わたしをふり向いた。