嫌ってない?

 ウソ。

「だって、わたしのこと嫌ってるからキスを――」

「すげー後悔した!」

 楓くんはそう言い切ると、蛍光灯の白い光の下でさびしげに目を伏せた。

「こんな自分にムチャクチャ腹が立ったよ。理子はアニキに夢中だってわかってたのに、なんてバカなことやっちまったんだろうって。しかも二回もだ」

 楓くんは、わたしをまっすぐに見た。

 せつなそうな、茶色の瞳。

 わたしをトクン、トクンとふるわせる。

「入院中いつあやまろうかと考えていた。ずっとあやまりたかった。ゴメン――」

 息をするのを忘れてしまいそうになるほど、楓くんをマジマジと見つめた。

「わたし、嫌われてなかったの?」

「ああ」

 楓くんは深くうなずいた。

「本当にホント?」