「冗談なんかじゃ済まないよっ。わたし、ショックだったんだから。まだ怒っているんだからねっ」

 わたしは楓くんのうでをガシッとつかんだ。

「ちゃんと言うまで、この手を離さないもん!」

「あ、の、なあっ」

 楓くんは、ワナワナとふるえた。

「またそれか! おまえ、昔からそればっかだなっ」

 楓くんは、わたしの手をふりほどこうとした。

 そう、これは楓くんと樹くんに対抗できる唯一の戦法なんだ。

「言うの? 言わないの? どっち?」

 わたしも負けずに力を入れてギュッと抱きしめた。

 引きずられても離さないもんね!

「くそっ」

 楓くんは大きい瞳を動かして、まわりを確認したあと、

「また、泣いてるかと思ったからだよ! あのときみたいにな!」

 ヤケクソみたいにさけぶ。

「えっ」