とんっと後ろ手で扉を閉めると,榛名くんは私を片手で抱き締めた。

まだまだ慣れない温もりに,じわりと肌が赤らむ。



「はぁぁぁ。ありす,なんでそんなに可愛いの。それともそれが年上の強み? あざとすぎる……心配になるくらい」

「榛名くん?」

「ううん,何でもないよ,ありす。それより個人部屋だと狭くってごめんね。客なんて来ないから,椅子1つ無いんだ」



榛名くんは自身の寝具に座って,ぽんぽんと叩いて見せた。

座れって,ことかしら。



「大丈夫。なにもしないから」



私が迷ったのを勘違いしたのか,榛名くんはそんな風に笑う。

なにもって,何の話……



「違うわ,私はただ……今夜も榛名くんはここで眠るのに,外から来た私が座っても良いのかしらって,それで,それだけで……」



ぽおっと,赤面してしまう。

それもこれも,きっとここにはいないすずちゃんとの会話のせい。



「あはは,うん……じゃあほら,ありす」



おいでと手を広げる榛名くん。

私は少し恥ずかしく思いながらも,その横に座り,嬉しそうな彼にまた抱き締められる。