「はっ初めまして……っではないですけど……榛名くんとお付き合いさせて頂いてます,来栖 有栖です」
玄関にて,私はばさりと頭を下げた。
果物ゼリーの詰め合わせですと手渡すと,榛名くんのお義母さんはくすくすと笑う。
「ふふふ,あらまあ。いいのよ,有栖ちゃん。可愛いお顔を簡単に下げちゃいけないわ。取り敢えず上がって頂戴」
「そうだよありす。そんなことしに来たんじゃないんだから。それに手土産なんて……結婚の挨拶じゃ無いんだから」
「けっ……いいえ,あの……お父様の方は今日は……?」
靴を脱いで揃えようとした私の手を,榛名くんはまるでエスコートするような柔らかさで引いた。
彼と手を繋ぐことには慣れているため,私の視線は自然とお義母さんの方へ向く。
「ふふ,仲良しで何よりだわ。夫は今日は仕事なの。有栖ちゃんにも逢いたがっていたのに,祝日まで仕事だなんて,本当に可哀想なひと」