「きっと,多分だけど……私がどこかに行かないか心配なんだと思う。その辺の信用がないから遠ざけて私を試してるの。そっちがその気ならって,私,もう気にしないことにしたんです」
彼の記憶にいないんだって,そう思ったときはとてもショックだった。
今もご丁寧に知らんぷりして接されると傷付くし,泣きそうだし,逆に放って置いてやりたくなる。
複雑で硬い何かに首を絞められるように,くるしい。
だけど,それはチェーンのようだと気がついて。
その鎖の先に繋がるのは,鍵。
問い詰めて白状させることも出来る私が持ってる榛名くんの事実は,彼の記憶の鍵。
元に戻るための,重要なもの。
だけど私は,榛名くんのために,榛名くんが満足するまでは絶対にこれを使わないと決めている。
私も彼の,ごっこに付き合うことにしたんだ。