その日の私は,もう榛名くんの見舞いには行けなくて。
憂鬱で大きな不安に苛まれながらも,翌日からはまた朝お見舞いに行った。
動揺を露に教室に飛び込んだ私を紗ちゃんが抱き締めて,震える私を甚平くんが宥めてくれたから,その勇気が持てた。
最初の一回は一瞬目を丸くした榛名くんだったけど,その後は気安く話しかけてくれた。
直ぐに退院出来ると言われた榛名くんは,本当に直ぐに退院してきて。
学校側に事情を話すと,それ以外特段困ることも無しに生活を始めている。
「やあ来栖さん。今日もあいつの教室行くのかい? いい加減浮いちまって居心地悪いだろうに」
「いいんです。だってこれまで食べてた場所は,待ってたって来てくれないんだもの」
忘れるって,そうゆうこと。
これは既に実証済みだ。
新しくお友達と言う関係を拒まれること無く築いているから,もしかしたら頼めば来てくれるのかもしれない。
でも,それでは私の方が嫌だから。
そろそろ,本当に淋しい。
「いつになったら戻んだろうなあ。特定のやなやつって言うなら,分かるんだけどな」
「ああ,それなら……当分は戻る気無いんだと思います。榛名くん,わざと忘れたみたいにしてるんです」
「みたい? 忘れたって医者も」
これを知っているのは,きっと私だけ。
伝えてしまうか迷ったけれど,甚平くんならきっと信用できる。
「お医者様は,患者の榛名くんを信用しただけなんです。私も最初はショックだったけど,冷静になって逢うと分かります。彼いつも私の前で怯えた目をしてる」
「どうして……」