「読み方は,あってるわ。でも文字に起こすと,大分違う。私はね,あなたの義理の母で,あなたには大層嫌われていたの。とても当たり前の感情だし,思い出すまでもそんな風に呼ばなくていいわ」



気遣わしげに榛名くんを見て口にしたお義母さんは,寧ろ自分がふらふらと倒れてしまいそうだった。



「……ふーん」



記憶が無いと言うにはあまりに冷たくて,私はぱっと榛名くんを見る。

お医者様の方も,お義母さんの態度を見て,気まずそうに立っていた。



「あ,えー。一過性の物とも思われますが,もういくつか検査をしたいと思います。が,よろしいでしょ……」

「それで,そこの彼女は……俺のトモダチ? それとも,ガールフレンド? きゃっ,あんまり可愛いんで照れちゃうなぁ」

「……っ委員会の! ただの先輩です! 確かに……お友達,だったかもしれません……!」



私は私を引き留めるお義母さんを置き去りに,病室を出た。

彼女のように,同じ病室の患者さん達に頭を下げる余裕も持てなくて。

ただ,胸の痛みに病院を去った。

榛名くんが私を,私をあんな風にからかうだなんて──!!