そんな時だ,ありす。

ここから先は,君にはとても話せないけど。

俺は寝ていたとかで教師の反感を買って,図書委員なんかに任命されてしまった。

だから,渋々でた委員会も,適当な自己紹介のあとはぐっすりだった。

いつの間にか話題は当番の日にち決めに変わっていて,ペアに志願してきていたこなつも,勝手に決めてしまおうと俺の事はほおっておいていた。

なのに,とんとんと,くすぐったいような力の弱さで,誰かが二の腕をつついた。

それが,君だったんだよ,ありす。

最初重たい目蓋を上げたとき,担当の教師のうち気の弱そうな女のひとの方かと思ったんだ俺は。

だからいざ顔をあげて,君がくりくりと目を丸くした時,俺もどうしたって驚いた。

あんまり驚いて言葉を失っていると,君は笑ったんだ。



『2年生は朝かお昼か,選べるのよ。あなたも混ざらないと,都合の悪い方になってしまうわ』

ー迷惑だったらごめんね。



寝ていたようなやつだ。

そんなのどうでも良いに決まってる。

迷惑なんて考える必要だってない。

この(ひと)は,嫌みも興味もない純粋な親切で,わざわざ俺の腕をつついてきたのだ。

そう,その微笑みを見て理解した。

何かしら聞いていて,もしくは一目見て。

この場所で,俺にそんな瞳を向けられる人がいるなんて思わなかった。

何よりも君の微笑みが,綺麗に見えたんだ。