「でも,そう言うだけでそれ以上は言えないんでしょ? ふふ,おかしい。あんなに尊大でふてぶてしくて敵なしだったあなたが,私なんかのたった一言を恐れて身動き1つ取れないの。こんな言葉を使う日が来るとは思っていなかったけれど,あなた今とっても可愛いわ」



もしかして,2人って……そうゆう?

だったら私,もっと遠慮した方がいいんじゃ……

でも,その割りには雰囲気が,なんか。

穏やかじゃ,ないような……?

覗き見ているのが,何だかいけないことをしているようで。

今日は諦めようと踵を返そうとしたとき



「これで榛名を諦めてあげようっていうのよ? もちろん,あの純粋無垢な先輩にも,金輪際余計なことは言わないと約束するわ。ね,榛名……キスしてよ,とびきり熱くて深いやつ」

「それだけは,絶対に嫌だ。信用するしない以前に,もう誰ともそうゆう行為はしない」

「なのに,自分に都合よく私には黙ってろって? やっぱり図々しいのは変わらないわ。でもそんなわけにもいかないの,分かるでしょ?」

「こなつ……」



榛名くんの参ったような声がこなつちゃんを呼んだとき。

思わず私は,棚にかかとを引っ掛けた。

こなつちゃんからそんな言葉が飛び出たことに驚いて,小さく怒るだけの榛名くんに戸惑って。

先輩って,誰……

もしかして,私?

榛名くん,一体,私に何を隠したいの……?