ペアなのは,榛名くんと同じクラスの西野こなつちゃん。
こなつちゃんはあまり知らない,と言うか嫌われている気すらするけれど。
榛名くんはきっとサボったりしないもの。
あまり広くないこの部屋に,探せばきっといるだろう。
本の整理かな……
でもそこまで真面目とも思えないような……?
トイレの可能性も無くはないけれど……
私は一先ず,本を抱えて図書室を一周することにした。
「……」
「はるな……ね……」
1番奥の,死角が多い壁がわの棚後ろ。
先にこなつちゃんの声が聞こえた。
何か隠し事をするように,相手は小さな声で話していて,会話の内容までは分からない。
でもこなつちゃんの声だけを聞いても,相手が榛名くんだと分かる。
会話に割ってはいるのもどうかとは思うけど,これが2人の仕事である以上,私は良かったと少しだけ早歩きに変えた。
「いいの? 私そのうち,ほんとに先輩に言っちゃうよ?」
「また,それ?」
心底嫌そうな,聞いたことのない榛名くんの声に,私は登場をやめて少しだけ本棚の隙間から覗く。
その距離の近さに驚くと,こちらに気付かないこなつちゃんが更にそっと榛名くんに寄った。