「あ! ねぇ来栖さん,お昼,良かったら……どう? 君,お弁当だから,ちょっと買ってくるまで待ってて貰わなくちゃなんだけど」
陽気に手をふる甚平くんに,私はパッと振り返った。
隠す必要なんて無いと言わんばかりの彼に,私の方がざわめくクラスメートをチラリと見てしまう。
「あ,えっと……お昼,ですよね? ごめんなさい,私今日は後輩の子と先に約束があって……」
「あれま,珍しい。失敗したな,それは。せっかく君の友達にも許可を貰ってきたのに」
「ああ,私,紗ちゃんにもまだ伝えていなかったの。ごめんなさい」
言いながら,紗ちゃんと目があったので,ジェスチャーで伝える。
流石長年のお友達と言うべきか,伝わったようで。
丸い目が返されて,次には彼女は吹き出している。
「謝らなくったっていいんだ。俺がほんの少しばかりツイて無かったっていうだけ,ね? 明日はどうかな,俺,今日は大人しく諦めるよ」