はっと,2人して離れる。



「ぇ」



と,失っていた意識を手繰り寄せるように,榛名くんが声を漏らす。

私はそんな彼を,ぱちぱちと正面から見た。

お互いに,カアッと赤くなる。

でも……良かった……

その顔を見て思う。

榛名くんも同じように,恥ずかしく思うのね。



『……? 入ってもいいのかしら? 有栖ちゃん』

「あっはいっだいっ大丈夫! です! ごめんなさい直ぐに開けます」



階段上ってくる音,聞こえなかった……!

ノックへの返事もなく,妙な静けさにかけられた言葉に,私は跳ねるように立ち上がった。

手の甲の冷たさだけじゃ,ほとぼりも冷めない。



「あら,どうしたの……?」



お義母さんはきょとんとすると,奥の榛名くんを見る。

私が何も言えないでいると,私に視線を移し直したお義母さんは,ああと納得したように声をあげた。



「やっぱりだめだったんじゃないの,榛名くん。私も急いだけれど,遅かったみたいでお邪魔したわ」

「いえっ邪魔だなんて……!」



とんでもない,です……

ほんとうに,はい。