『来栖さん,俺と,付き合ってください……!』
夏休みの明けたとある昼休み,匿名の手紙で私を呼び出したのは,クラスメートの坂本甚平くんだった。
何のようだろうと思っている暇もなく告げられたお想いに,分かりやすく狼狽えてしまう。
甚平くんは,片手を差し出して軽く上体を傾けると,私をじっと見つめて待った。
甚平くんはクラスの中心にいるような明るい人で,サッカーに打ち込む姿は殊更女の子に人気がある。
そんな人が……私を?
私なんかにも,裏表なく話しかけてくれる人だった。
それに深い意味なんて無いと思ってた。
「ご……ごめんなさい!」
「理由を……聞いてもいい?」
「お付き合いとか,まだ……私には早いと思うんです」
「そんなことないよ」
フラれる事なんて分かりきっていたように,甚平くんは真っ直ぐに立っている。
それでも私が首を横に振ったのを見ると,甚平くんは両手を上げて降参のポーズを取った。
「分かった,分かりました。今は引き下がります。でも,俺ってば諦め悪いので,俺の気持ち,それだけは覚えていて下さい」