俺は部屋に戻るとじんのがいた。

「おにいちゃん、どこいってたのー?」

「ごめんごめん、お風呂の前にトイレに行ってた」

「いまね、まだ未知お姉ちゃんがお風呂入ってたの。
 もうちょっとしたら一緒にはいろっ!」

未知さんと言う言葉を聞いた瞬間に
未知さんの下着姿が頭に浮かぶ。

そして未知さんの肌の柔らかさを思いだす。

「お兄ちゃん、顔がニヤけてるよ?」

我に返る。

「ごめん、今日は楽しかったなぁーと思ってさ。
 じんのはどうだった?」

「杏子先生とくるみちゃんは優しいの。
 でも未知お姉ちゃんも優しくしてくれるの
 だから楽しい!」

また未知さんの名前が出た。
反射的に下着姿が脳裏に映る。
そして今度はさらにその姿で俺を誘惑してくる。
想像が勝手に湧き起こる。

さっきの衝撃が大きすぎる。

このままではおれはおかしくなってしまう。
早くお風呂に入って寝よう。

お風呂も上がって、女性陣の部屋にじんのと2人でおやすみの
挨拶にいく。

「冷蔵庫の飲み物やトイレとか家にあるものは
 勝手に使ってください。それではおやすみなさい」

未知さんは顔を赤らめ終始下向き加減だった。

俺はじんのの部屋でじんのを寝かしつけた。
遊び疲れたのかお昼寝をしてもなお
今日はすぐに熟睡し始めた。

寝たのを見計らっておれは自分の部屋に戻る。

ベットに入って眠りにつこうとするが
未知さんのことが脳裏に浮かぶ。

興奮して眠れない。

無意識におれは自分をさわりはじめた。

「あっ………」
「ぅ………」

スピードが早まる。

気持ちが高まる。

声が無意識に出る。

「みちさん………」

(!!)

俺は頂上に達する直前に我に返った。

(あぶない、先輩を想像しながらなんて………)

さらにシルさんのことも思い出す。

俺はシルさんが気になっているはずだ。
未知さんではない。
惑わされるな、おれ。
そう言い聞かす。

その日の夜は、未知さんの下着姿、肌の感触と俺の理性の
脳内バトルが繰り広げられた。

気付いたら寝ていたが、最後に時計を見たのは
午前1時。

よほど激しい脳内バトルを繰り広げたのだろう。
脳に未知さんのあわれな姿が焼き付いてしまった。

……………………………

夜中、俺はなにかの感触で目が覚める。

布団の中で何かが動く。抱きつかれている感覚だ。

「未知さん?」

寝ぼけながら昨日の余韻で下の名前で読んでしまう。

(!)

そんなはずはない!じんのだ。

「じんの?」

未知さんと言ってしまったので
やってしまった感が俺を襲う。
今度は完全に目が覚めた。

「眠れないのか?」

「………」

返事がない。
よくよく抱きつかれている感覚が
じんのの大きさではないことに気づく。

「えっ!」

布団の中をのぞく。

そこにはくるみがいた。
それも下着姿だ。

(!!)

なんでくるみがここに!

おれは気が動転する。

くるみが俺の胸に顔をうずめて
ぎゅっと抱きつく。

「くるみ……?」

「名前のわからない人にも未知さんにも
 じょうくんを渡したくない」

くるみのうでがもう離さないと言っている。

「…………」

(くるみがこんなに感情をあらわにするなんて……)

くるみを振った罪悪感とくるみがこんなに感情的になっているのを見て
おれも少し感情的になった。

俺はくるみの頭をなでた。
左手でくるみの腰に手を回し、
右手でくるみの頭をなでる。

ほんの少しの間、くるみはおれに身体を預けた。

そしてそのままくるみは俺の顔の方に上がってきた
自分の腕を俺の首に巻き付けて抱きついてくる。

おれもくるみを抱きしめてまたあたまをなでた。

くるみの頭が俺の横顔から離れた。
(もういいのかな?)そう思った瞬間、

くるみの唇が俺の唇に絡みつく。
フレンチキスではない。

ディープキスだ。

くるみの唇が俺の唇にまとわりつく。

上唇も下唇もくるみの唇で蹂躙される。

(!!)

くるみの舌がヌルッと上唇と下唇を掻き分けて
侵入してくる。

こんなに激しい、エロいキスは初めてだ。

くるみは不安になっていた。
名前の知らない女性のこと
今日の未知さんと俺が脱衣所で過ごした時間のこと
そしていまさっき『未知さん』と間違えて言ってしまっこと。

おれを離したくない、誰にも渡したくないという気持ちが伝わってくる。

くるみはそのまま俺の首筋にキスをし始める。
くるみの手が俺のシャツの下から入ってくる。

「くっ、くる...!」
くるみの名前を呼ぼうとするが
くるみがキスをしておれを黙らせる。

舌が絡みつく...

くるみの強引さと想いに俺の気持ちが高まる。

くるみと入れ替わり上下が逆転する。

くるみの唇を俺から奪う。
くるみの首筋にキスをする。

くるみは両腕を俺の背中に巻き付ける。
そのか細い腕からくるみのうれしさが伝わってくる。

「ブラ取って......」

くるみが恥ずかしそうにそれでいて俺の目を見ながら言う。

俺とくるみは付き合っていた頃から身体の関係は持っていなかった。
フレンチキスまでしかしていなかった。

高校を卒業してお互いが大人として自覚できたときに
初めてをしようと約束していた。

くるみは家族が誰もいない。施設で育っている。
俺は妹のじんのと二人だけの生活。
お互い特殊な家庭だったので
初めての行為については慎重になっていた。

だからこそくるみがディープキスをしてきたときには
驚きしかなかった。

(『ブラ取って......』その言葉は次のステージに
進むと言うことだぞ、くるみ)

くるみにここまでのことをさせてしまったのはおれだ。
くるみが嫌いなわけじゃ無い。
むしろ好きだ。ただ、シルさんという俺では理解しきれない女性と
出会ってしまっただけだ。
くるみと一緒になるのがくるみにとってもおれにとっても
幸せなはずだ。
そう思い込む。

「くるみ、外すよ...」

「うん...」

初めてのくるみの肌、
初めてのくるみの胸、
初めてのくるみの......

ふたりはお互いの身体を愛し合った。

「くるみ、挿入るよ」

「うん...」

お互い初めてだからぎこちないのは仕方ない。

挿入ようとしたときにくるみの顔が目に入る。
涙を流している。

それはうれしくて泣いているのかわからなかった。
むしろ悲しい涙に見えた...
その涙が俺の心を苦しめる。

こんな形でくるみのはじめてを奪ってはいけない。
おれがちゃんとくるみを愛して
その先にくるみと一緒にならないといけない。

「くるみ、ごめん...
 こんな形の初めてはほんとはイヤだよな。
 くるみをつらいを想いにさせてごめん」

くるみはせき止めていた涙が流れ出す。
声には出さないが泣いている。

くるみのおでこをなでながらおでこにキスをする。

「もうちょっとまっててほしい。
 俺の気持ちの整理をつけてから
 くるみとちゃんと向き合うから」

くるみはしくしく泣きながら一言だけ言う。

「待ってる......」

くるみは服を着て1階に降りていく。

おれはどうすればいいのか...答えが出ないまま朝を迎える。