余韻なんてものを一切感じさせず棗は立ち上がった。



そんな棗を私は座ったまま目で追う。





「授業始まるけど」



「え…もう行っちゃうの?」




「……こわ」


「え、変なこと言った!?ごめん…」




私を見る棗の顔はなんというか、ゲッソリしていた。


こわって言われた。なんで…?




「無自覚なの?タチ悪いね」



「何を言ってらっしゃるの…?」




「一緒にサボる?」

「…っ、うん!!」





首が外れるほど全力で首を縦に振る。


そんな私を棗は笑った。




「お前にとって俺は悪影響かもな」



「そんな事ないよ、私幸せだもん」



「…そういうとこだけど」



「え?」

「いやなんでも」





呆れ笑いで私の隣に腰を下ろせば、そのまま壁にもたれる。



窓からさす光に照らされた棗は王子を超えて天の使いに見える。