「……未来か」

 証拠もないなら、それはただの戯言。だけど皇子は、笑い飛ばすこともなく真剣に向き合おうとしているように見える。

「……ならば、やはり天は見ておられるのだな」

「え?」

 ハッとしたように顔を上げると、皇子は困ったように微笑む。

「……昔、父上が言っておられたのだ。天は何時も、私達を見ておられると」

 天?それは、神様とか仏様とかのことを意味しているのだろうか。

「このような悪戯を仕掛けてくるとは、たまげたがな」と、笑う姿に私はそっと口を開く。

「……未来から来たことを信じてくれるの?」

「優花殿の目を見ればわかる」

 皇子は私の瞳を見つめ優しく微笑むと、どこまでも青く澄みきった空を見上げた。

「……ミライ。残るであろうか、私の名も」

「え?」

「その皇子のように、優花殿の世界にまで」と、問いかける皇子の声にはどこか切なさが滲む。