「信じてもらえるような証拠があったら良かったんだけど、私は歴史が苦手だからこれから起こることも記憶してない。ただ、一人だけ覚えている人はいる」

「……誰だ?」

「藤白坂で亡くなった皇子」

「……私は、聞いたことがないぞ?」

 ならば、今は飛鳥時代でもあの皇子の亡くなる前なのかもしれない。

「悲劇の皇子って言われてる。その人のことなら少しは知ってるんだけど……」

「有名な御方なのか?」

「うん。私の住んでいるところでは、知らない人がいないぐらい」

「……それは、すごい御方なのだな」

「その人の詠んだ歌も有名なんだよ。私もね、何度もお墓参りに行ったことがあるんだ」

 まだどこかで、生きているのかもしれない。目の前にいる皇子も、似たような格好をしているし。きっと、この時代にはいるはずだ。偶然に会えたらいいな。なんて、思うけど。