「優花殿の髪は、不思議な色をしているな」

 呆然と立ち尽くす私に、皇子が笑いかける。

 ただ、少し甘栗色に染めているだけ。と、そこでハッとする。

 この時代は、髪を染める技術なんてないんだ。

「これは、染めたの」

「染める?」

「布を染めるように、髪を染めることができるの」

「なんと! 月にはそのよう技術があるのか!」

 そうやって笑う皇子は、いつも通り真っ直ぐに私を見つめる。純粋な瞳で。

「……月じゃなくて未来だよ」

 ポツリと呟く私に「ミライ?」と、皇子は首を傾げる。やっぱり私は、この人に嘘をつきたくない。