しかしその瞬間、皇子の顔からスッと表情が消える。だけどそれはほんの一瞬のことで、次の瞬間にはいつものように笑顔を浮かべる。

「知り合いが崩御してな。その弔いを、していたのだ」

 ……知り合い。

「前のことだ。気にするでないぞ?」

 そう言うと、皇子は軽快な足取りで小鳥の後について歩く。

 きっと私は、触れてはいけないことに触れてしまった。だけど、どこか違和感を感じる。

 __知り合い。

 あの瞬間、皇子は私から目を逸らした。だけど、その違和感の正体を確かめる勇気は私にはない。

「どうかしたのか?」

 立ち止まったままの私に、皇子は不思議そうに首を傾げる。

「ううん」と笑って誤魔化すと、皇子の横に並びそしてまた肩を並べて歩き出す。