「とても、似合っているぞ」

 外で待っていた皇子は、私の姿を見るとそう言った。

「あ、ありがとう」

 恥ずかしくて、思わずハエ叩きで顔を隠した瞬間ハッとする。

 そうか!セルフ顔隠しはこういう時に使うのか!

 納得しながら目の前の皇子に視線を移すと、今日は淡い紫色の袍に白い袴を履いている。そして手には、何やら細長い気の板が握られている。

「それは、何に使うの?」

 その木の幅では、顔を隠すこともできないだろうし……。

「これは木簡(もっかん)だ。何か良い歌が浮かんだならば、その場で詠もうと思ってな」

「その板に、書くってこと?」

「そうだ」

 どうやらこの時代は、木の板が紙のような役割を果たしているらしい。