「……私、人間だけど」

「そうなのか!?」

 目を見開く彼に、とうとう頭痛を覚える。どうやら本気で、兎の化身だと信じていたらしい。

「でも、空から墜ちて来たのをしかと見たぞ?」

 確かに、そこが問題なんだ。そう言われても私にはわからない。記憶がないのだからどうしようもない。とりあえず、麻美に電話をしないと。

 隣から刺さるような視線を感じながら、私はスマホを取り出した。だけど画面が真っ暗で、何故か起動することができない。

「……何で」

 充電はまだあったはず。そうなると落ちた時の衝撃で、壊れてしまったのだろうか。

 これは、本気で困ったことになってしまった。

「それは何だ?」

「……スマホ」

 落ち込んでいると、彼は私の手から動かなくなったスマホを取り上げ色んな角度から眺めている。

 その様子から悟った。
 この人、スマホを見たことがないんだ。