「嘘を仰らないで。一年間、あなたを見ていた私にはわかります。刃(やいば)のような言葉は、璃玖さまの心を傷付けるだけじゃなく、あなたの心も傷つけることになるのよ?」
穏やかに自分を見つめる玲子を前に、隼人は目をつむって嘆息した。
「……そうじゃなきゃ、あいつの執事で居られない。俺はどうしても、これからの二年間、あいつの傍に他の男を侍らせたくないんだ」
「……だから、私の告白をお断りになったのね」
「主と執事の間に恋愛感情はあってはいけないんだろう? だったら、君とあれ以上一緒にいるわけにはいかなかった」
「その想いを隠したまま、二年間過ごせて?」
ひたと隼人を見やる玲子に、隼人は真っすぐ視線を返す。
「過ごしてみせる」
迷いなく言い切る隼人に、玲子はもう言う言葉を持たなかった。
ああ、この真っ直ぐな目を、自分に向けて欲しかった。