薔薇の花が見事な庭園風の中庭の片隅に、二人は居た。薔薇の生け垣を加工用に飢えられている樹木の陰に隠れて、二人を見つめる。
「璃玖さまは隼人さまをお好きなのね。表情からよく伝わってきました」
自分の名前が出て、びっくりする。そして、今、痛いほど打ってる心臓の鼓動の名前をぴたりと言い当てられて恥ずかしかった。
「そして隼人さま。あなたもそうなのですね」
さあっと風が流れる。耳を疑うような言葉が玲子の口から出て、璃玖は目を瞠った。しかし。
「違う。俺はあいつのこと、好きじゃない。むしろ、嫌いなくらいだ」
硬い声が、中庭に落ちる。背中から冷水を掛けられたように、璃玖の全身が凍った。
嫌い。そうか、隼人は璃玖の事、嫌いなんだ。璃玖がいくら隼人を追いかけても無駄だったんだ。
ずきんずきんと心臓が痛む。璃玖はそっとその場から離れた。