彼女が高学年になったとき、
部屋の模様替えをしました。

ぼくは彼女の部屋から引越しました。

玄関のげた箱の上、
その片すみにぼくは置かれました。

学校に行くとき
「いってらっしゃい」と心で思いながら、
彼女を見送りました。

学校から帰ってくると
「おかえりなさい」と心で思いながら、
彼女を見て安心しました。

朝と夕方、
彼女の元気な姿を見るだけで、
ぼくは幸せでした。


また、ぼくは引越しました。
今度は家の外にある物置きでした。

ぼくの周りには彼女が小さい頃に
着ていた服がたくさんありました。

服にはかすかに、
彼女のにおいが残っていました。

目を閉じると、
笑い顔の彼女がぼくの前に現れました。

いつも一緒に過ごしていた、
あの頃に戻ったみたいでした。

だから、真っ暗な中にいても
少しも怖くなかったのです。

彼女との思い出に包まれて、
ぼくはやっぱり幸せでした。