その晩、ローズは
久し振りに、メリーアンの寝室にいた。


 昼間、
よほど消耗したのか、
グッスリと。
眠りこけるメリーアンのベッドの端に。
いつもとは逆にローズは、
腰掛けていた。


このくたびれた。

実はまだ
決して大人ではなかった、
気の毒をした娘の

頭を撫でた。


本当に、久し振りだった。


 久し振りついでに今度は、
思い出すのが困難な程
とおい。

記憶の底に沈んでしまった子守唄を
歌ってみた。

聞き取れない程の
小さな声で。


♪優しい ことが うまく
 言えなくて 祈り

 ただ 隣で うなずくしか
 できなくて 祈り♪


 ぐっすりと眠っているはずのメリーアンが
少し、笑ったような気がし。

ローズが覗きこんでみると
やはり、眠っていた。
とても深く。


 それを確認したローズは、
気をとりなおし、再び歌を続けた。


♪優しい 声が 届きますように 祈り
 どうか 優しい 音が
 奏でられますように 祈り♪


 今度は確かに
眠っているはずの
メリーアンの目から、
涙が

一粒こぼれ。


それを見たローズの目からも、
熱いものが。

次々と。


溢れ出した。