その4
祥子



「仮に南玉の幹部クラスが誰も来ないとなったら、あの二人のどちらかが、南玉の”試合放棄”をさせないため、こっちに挑んでくるよ…」

「…」

「…でも、一人は部外者、一人は幹部級にない下っ端。すなわち、どっち共、南玉の総意として私ら側に宣戦を告げたということに見なされない立場だ…。で…、さあ、どうしましょうかってことよ。そこで、私が両軍の雌雄を決するタイマンのサシ相手ってのをさ、真樹子さんから引き出したことが生かせるって訳…」

ふう…、ようやく察しがついたわ

「久美、静美、分かった?」

真樹子さん、私が”答え”にたどり着いたと見て、久美たち二人に向けたわ


...


「いえ、まだわかりません」(久美&静美)

「じゃあ、私の察したことを言おう」

私はあえて答えた

「…こちらに挑んだ人間は、麻衣自身の口から南玉と雌雄を決する戦いだと認めさせる…。それを以って、南玉の不戦敗を避ける。違うか?」

「ピンポンだよ、祥子」

「だからさ、そうなら出てくるのは本田だろう。だって、そもそも横田って子、南玉外部の人間じゃないか」

「それでもね、私の結論では100%、横田競子が来ると見てる」

その理由は?

これが私の素直な気持ちだった

いや、真樹子さんを含めた全員の…


....


「麻衣さん、私も横田の気性からして、ヤツって見てるわ。でもさ…、祥子の言った南玉メンバーじゃないってこと、これはどうクリアできるのかしら?」

「まずね…、あのカモシカは結論先ありきなのよ。久美はヤツの自宅近くで手荒な挨拶かました現場にいたからわかると思うが、私に正面からぶつかる気なんだよね」

コイツ、横田を語る目、ハンパじゃないぞ…

そうか…、やっとわかった!

麻衣は猛っていたんだ、南玉連合部外者の横田に…


...



「…アイツさあ…、今日がその舞台になるかもしれないって踏んでいたね。おそらく、私とサシで決着する準備も積んできたと思う。でも、南玉の試合放棄は絶対避けるという使命感はさ、ヤツ、南玉メンバー以上のものを持ってるんだろうよ。…それは亜咲さんや紅丸さん、部の先輩でもある相川さん…、彼女らとの関係があると思う」

なるほど…!

確かに横田競子は紅組と南玉連合双方ともに、深くかかわってきてるんだったな…

「…ヤツにとってはそれ、今夜、私と正面からの激突を避けないことと同等になるんだ。だから、横田は時間ぎりぎりまで待って、もし南玉が誰も現れなければ私に挑んでくる…」

ここで私が極論を麻衣にぶつけた

「それならお前、南玉の外部の人間でもOKよってヤツと立会いの墨東に表明するのか?」

「ハハハ…、いくら何でもそれじゃあ都県境界隈も他県も了解しないでしょ。祥子…、たぶん横田はさ、たった今、南玉に加盟したと宣言して私に向かって来るよ…」

「!!!」

もうみんな、口あんぐりだったよ…