その5
多美代



ついに、本郷が現れた…!

さらに、津波や北田、新村達もだ

あっちは続々と川原に集結してるっていうのに…

すでに敵は30人を超えてるよ

南玉は今だに誰も顔を見せていないってこの状況…

なんたることだ!


...



もうリミットだよ…

「本田さん、どうする?もう時間になるぞ」

「はい…。おけい、どうするか…」

「うん、7時半ジャストで私が突っ込もう」

「なら、おけいは南玉じゃない訳だし、私も一緒に突っ込むよ」

「いや、多美は今からすぐ高津さんとこ戻って、主だった人の首に縄つけてでも引っ張ってきてよ。いくら何でも、誰も顔出さなきゃ勝ち負け以前の話だしさ」

「でも…」

おけい一人を置いて行けるかよ

これが私の正直な気持ちだったが…


...


ここで、おけいが南玉連合のメンバーでないことを、私達は墨東の3人に打ち明けた

「…横田さん、キミは南玉に所属してないのか?…なら、向こうとの申し合わせに齟齬が生じるな。マズいよ、やっぱり」

「私、たった今、南玉連合に入りました。それでクリアですよね?」

「はあ…?」

「おけい、お前…」

私たち4人はまたもや、顔を見合わせてあっけにとられたよ

...


おけいが”本気”だということは、はっきり伝わった

今までさんざん、コイツには南玉の加入を勧めてきた私だけに、おけいの決断は歓迎には違いない

でもさ…、この状況だよ

素直に喜ぶ気持ちにはなれないよ、やっぱ…

しかし、”この状況”にいる私たちは、切羽詰ってるんだ、実際…

「…後は、向こうが私を南玉の代表と認めるかですが…。向こうの代表で本郷が出たとして、ヤツが”それ”を認めればOKでいいですね?」

「まあ、一応そう言うことにはなるだろうが…」

「じゃあ、そう認めさせるように突っ込みます。それで、先輩方に見届けをお願いします!」

「…わかった。そうとなれば、本田さんは早く行ったほうがいい」

「はい…」

墨東の先輩には、そう答えたものの…


...



「おけい…、敵は30人超えてるってのに…。私、お前についててやれないのかよ…。辛いよ、私…。もし、全員でお前を襲ってきたら…」

「そん時は、墨東の先輩が介入してくれるからさ…」

「そう言うことだ、本田さん。それは心配するな」

多美は大きくうなずいてた…

「いいか、多美…、私は全力で本郷をにぶつかるよ。勿論、勝てるかどうかはわからない。私は負けてもいいんだ。だけど、南玉が誰も来なかったら、それは本郷に屈したことになる。それだけは絶対避けなきゃ。それ、多美にかかってるんだ。私は誰かが来るまでがんばるつもりだけど、なるべく早く頼むよ(苦笑)」

「よし、死んでも誰かを連れてくる。待ってろ、おけい。本郷なんかに負けるな!」

「ああ…」

「本田さん、俺達からも頼む。じゃあ、急げ!」

「はい!行ってまいります」

私は火の玉川原を後にし、一路、南玉メンバーの元に向かった…

決死の覚悟を以って…