火の玉川原決戦カウントダウンへ④/立ちはだかる発熱少女

その1
ケイコ



夜7時ちょっと前…

多美と私は火の玉川原土手上に到着した

「…ざっと20人ってとこかな、敵は…」

「そんな感じだな、今のとこは。でも、本郷はまだいないみたいだね。あっ…、岩本真樹子だ!」

私は多美にそう言って、眼下の川原を指さした

「あれが岩本か…。かーっ、ここから見ても性根悪そうな女だってわかるわ。匂うようだわ」

”すごい”先入観ではあるが、あの人にはそれだけの毒があると思う

何しろ私は、運動公園の”あの事件”で思い知らされてるからね…

...


そこへ、男の人数人から声がかかった

「おたくら、南玉連合の人かな?」

「はい!もしかして、墨東会の方々ですか?」

「うん。積田さんに遣わってきた者だ。今日はよろしくお願いするよ」

「こちらこそです!本日は、ひとつよろしくお願いいたします」

墨東会の人は約束通り駆けつけてくれていた…

私はホッとしたって気持ちが強かったが、多美は理屈抜きで嬉しそうだった…(笑)


...


墨東会の人は3人来てくれてたよ

「じゃあ、君たちは新入か…。そんで、総長の荒子ちゃんは来るんだろうね?それから幹部の主だった人たちも…」

多美は私に顔を向け、どう話そうかって感じだったわ

「あのう、仮に総長も幹部も通告の刻限に間に合わなかったら、どうなりますか?」

私はまず、ざっくりと問いかけてみたんだけど…

「さっき、真樹子と話したんだが、あくまで宣戦受諾は組織のそれなりの立場の人間が出向いて意思表明すること。それが要件だって言い張ってたよ。つまり、君たち二人では、南玉の総意を得た立場としては認めないだろう」

やっぱりか…

「先輩、岩本さんは今日、南玉の幹部全員が集結したら、どう決着を求めると言ってるんでしょうか?」

「全軍対決もいとわないとのことだが、可能なら互いに代表を出して、サシの勝負ってのを前提にしたいそうだ」

「では、その場合、あっちは誰って決まってないんですかね?」

「どうかな…。まだ聞いてないが」

よし、ここは突っ込みどころだ…


...


「すいませんが、伺って来てもらえませんか?こっちは幹部クラス出せって、半ば指名までされてるんです。私から言わせれば、向こうは寄せ集めの集団に過ぎません。そんな連中が、訳わかんない輩向けてきたらNG出したいですよ」

みんな腕組みして、ふんふん頷いてくれてるぞ…

「…何しろ、今日は互いの理念と信条を賭けた対決です。南玉連合は墨東さんもご存知のように、その理念の下、一貫した行動をとってきています。対して、向こうは今日もやくざまでさし向けてきて、こっちに挑んでくる連中なんです。であれば、自分たちは誰が出るかを伏せて、こっちだけに幹部以外は代表と見なさないと一方的に言われても応じられないですよ。その旨を伝えてもらいたいんです…」

「…」

あらら…、墨東会の先輩方も多美も口をあんぐりさせて、目が点だ…