その9
麻衣



「おい、総長の縄をほどいて差し上げろ!急げって!」

「よし、車に運ぶぞ…」

勝田さんは慎重な手つきで荒子さんを毛布に包むと、連れてきたの若い人と二人で外に止めてあるワゴン車に連れて行った

「おい、お前来い!」

私は5人のうちの一人を指名して、車まで走った

既にエンジンのかかっているワゴン車の後部ドアをから、荒子さんはすんなり車内に収まった

「お前も同行しろ」

私は、真樹子さんから預かった予備部隊のそいつに同行を命じた

「…はい!」

「勝田さん、コイツ一人つけますんで」

「了解だ。じゃあ、このまま大黒病院に直行しますよ。随時、状況はヒールズと総本部に入れますから…」

「お願いします!」

勝田さんと連れの運転手はワゴン車に乗ると、相和会御用達の大黒病院へと急行してくれた


...


廃倉庫の外で荒子さんを乗せた車が出るのを見届けると、急に動悸が激しくなった

一気に自分のやった行為の重大さ…、その実感が湧いてきたんだ

さすがに、私の心の主も平常心を失っていたようだし

総長…

近くまた会お会いしますので、そん時、またよろしくです

私はそう心の中で呟いた後、大きく深呼吸をしてから、倉庫内に戻った


...


「おい、お前らはこれから火の玉に行くんだぞ!グズグズするな!」

倉庫内の床に座りこんで、呆然としたままの久美と静美に、私は容赦なかった

しばらくすると、二人はほぼ同時にゆっくりと腰を上げた

それは俯き加減で、ややふらつきながらだったよ

言うまでもなく、二人の受けたショックは大きいだろう

まあ、祥子に言われるまでもないさ

悪趣味だよ、実際…

...


さて、今日はまだ終わっていない

私は二人より先に廃倉庫を出て、バイクで本日のメインステージ、火の玉川原を目指した…